視点シリーズ13 職場のうつ病

視点シリーズ13
職場のうつ病

「福島いのちの電話」顧問 本町こころとからだクリニック院長 上野文弥

「うつ病」の診断名

 うつ病が増えていると言われていますが、「うつ病」には精神病のもの・神経症的なもの・何れとも判別できないものに大別されます。病院では、精神病の方は「感情障害」又は「気分障害」と診断されますが、神経症的な方は「反応性うつ病」・「適応障害」・「自律神経失調症」等々の診断名がつけられています。マスコミ等は、精神病も神経症的なうつ病もすぺてうつ病として報道していますが、今回取り上げる職場のうつ病は、ほとんどが神経症的なうつ病であると言えます。
 いくつかの症例を紹介しましよう。

事例1:男性教師 41歳

 次々と本人にトラブルが生じるが、それへの対応かできないまま長期間苦しみ、そのストレスのため心身ともに疲れ果てて発病する。

 村の小さな学校から大きな市の学校に転勤して学級担任になった。クラスに不登校の生徒が2名いた。
 毎朝、子供を自宅まで迎えに行き、放課後も家庭訪問して不登校を治そうとがんばった。また、6月には学校で公開研究授業があるため、その責任者にもされてしまった。その準備に追われていたところ、自分の母親が入院してしまった。本人は教師としての経験もあり、優秀で指導力もある評価の高い教師であった。しかし、多忙で食事も満足に摂れなくなり、睡眠時間も4時間を切る日が続いた。1学期は頑張り通したが、2学期に入り1週間で倒れた。

事例2: 女性事務職 28歳

 本人の能力を超える業務に就き、周囲に援助を求めることができずに長期間頑張るが、心身ともに疲れ果てて発病する。

 職場結婚し夫の両親と同居した。姑との関係は悪かった。妊娠して産休、育児休業を1年とり、1年3ケ月のブランク後復職した。休業前の優しい上司は代わっていて、今度の上司は厳しかったという。職場に適応することが難しかったうえに、パソコンが出来なかった。そのため仕事のミスが多く上司に注意されたが、対応できずに不眠が続き発病した。

事例3:男性地方公務員 51歳

「マネージャー病」と診断
 最近、性格的な弱さから口下手で対人関係の下手な人か多くなっている。
 性格的な弱さ=神経質・些細なことにこだわる・完全主義・馬鹿真面目で融通が利かない・倫理観が強く潔癖すざる・気が弱く嫌と言えない等。

 公務員試験をトップで合格したが、人づきあいが下手で、無口なため、職場で次第に孤立していったと言う。担当する業務はすべてうまくやれたが、他の職場との連携や、交渉事は苦手であった。本人はそんな自分が許せなかった。気の弱さから自ら意見を述べることか出来ず、馬鹿にされることが多かった。

 若い時は、それでも責任を取らなけれぱならない事か少なかったが、ポスト職に昇進すると責任が重くなり、更にストレスが強くなった。その頃から、自分の責務を全うできたという自負心がもてず、強い自責の念から不眠が続き、発病した。

うつ病の症状と治療

 うつ病の症状は、メランコリー・不眠・死にたくなる・食欲不振・思考力減退・倦怠感・頭痛・肩凝り・便秘・女性の生理が無くなるなど、心身の症状として多く現われます。

 治療は環境調整が大切であり、薬物療法、カウンセリングなどで症状の改善に努めることですが、もっとも大事なのは早期発見と早期受診です。そのためには、家族の気づきと協力が重要であるといえましよう。

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